日本で鉄道が走り始めてから約140年、自動車が走り始めてから約110年が経過しました。この間、絶え間ない技術革新や社会整備が進められた結果、人々は迅速かつ快適な移動を手にすることができました。とりわけ自動車の普及は、多くの国民に豊かな生活をもたらしました。
しかしながら、日本ではつい最近まで、この自動車を優先としたまちづくりが進められた結果、大都市では環境問題が深刻化し、地方では交通弱者が増加するという、良からぬ状況が生まれています。
一方、日本より前に鉄道や自動車を導入したヨーロッパやアメリカでは、1970年代のオイルショックを契機に、人間中心のまちづくりへ転換しています。その結果、自転車や路面電車(トラム)など、過去の遺物と見なされていた乗り物が見直されています。
近年、コミュニティサイクル、コミュニティバス、カーシェアリングなど、新しい種類の公共交通が次々と誕生しています。これも自転車やバス、自動車といった既存の交通機関の使い方を、人間中心の視点で考え直したものと言えるでしょう。 当社が交通ではなく、モビリティ(移動可能性)をテーマに掲げているのはそのためです。どちらも移動を示す言葉ですが、視点が乗り物の側にあるか、人間の側にあるかという違いが存在しているように思います。 現在の日本は、さまざまな部分で転換が求められています。移動についても、人間中心の考えへと移行すべき時期に来ていると考えます。